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月と地球の橋
神話

月の女神と失われた橋

「月と地球の間には、かつて見えない橋が架かっていた。その橋を渡るのは魂だけだった。生きているものは渡れない、しかし望み続けるものにだけ、その輝きが見えるという——」

第一章

月宮の朝

月の女神・白妙(しろたえ)は、毎朝月面の白い宮殿の庭で地球を眺めることを日課としていた。青と緑に輝くその星が、彼女の最も愛する眺望だった。しかし今日の朝、地球と月を結ぶ虹色の光の橋が消えていることに気づいた。

橋は「想い橋」と呼ばれ、地球と月の双方に強い愛情を持つ存在の想いが結晶化したものだった。数千年の間、その橋は絶えることなく輝き続けてきた。今、それが消えた。

月の瞑想

「想いが消えたのではない」と白妙は確信した。「橋を壊す何者かがいる」。月宮の守護者たちに調査を命じたが、月の民には地球へ降りる力がなかった。ならば自分が行くしかない。女神は初めて、月を離れることを決意した。

「橋は消えても、想いは消えない。
それが月の女神が信じ続けた、唯一の真実だった。」

第二章

地球への降臨

白妙が月から降りると、その姿は人間の目には白い着物を纏った若い女性として映った。長い銀髪と、満月のように丸く輝く瞳。彼女が歩くたびに、足元に小さな月の雫が落ちた。

地球に降り立った白妙が最初に訪れたのは、日本の古い港町だった。そこで彼女は、夜ごと海に向かって祈りを捧げる老漁師に出会った。「何を祈っているのですか」と白妙が問うと、老人は答えた。「亡き妻が月に還ったと思っておるのです。橋を渡って会いに行けないかと」。

白妙は理解した。想い橋は、そういった祈りや愛情から作られていた。そして今、その橋が消えているということは、どこかで大切な想いが断ち切られているということだ。

第三章

想いを集める旅

白妙は日本中を旅した。山の神社で祈る巫女、海岸で涙を流す子ども、城の塔で星を数える老将——彼女は人々の想いを集めながら、橋が壊れた原因を探り続けた。

やがて、北の山奥に辿り着いた白妙は、「忘却の泉」と呼ばれる場所を見つけた。その泉の水を飲むと、大切な記憶が消えてしまうという。そして泉の周りには、自らの記憶を消そうとして集まった人々の影があった。

悲しみを消したい人々が自分の大切な想いまで捨て始めていた——それが橋を消した原因だった。白妙は泉の前に立ち、その清らかな声で歌を歌い始めた。月の光が歌声に乗って泉を包み込んだとき、泉の水が少しずつ変わり始めた。「忘却」から「癒し」へと。

その夜、夜空に再び虹色の橋が光り始めた。老漁師が見上げると、橋の向こうに愛する妻の姿が見えた気がした。「ありがとう」と彼はつぶやいた。その声が月まで届いたとき、白妙はそっと微笑んだ。